エリート御曹司は獣でした
「行きます。絶対に行きます!」


頭の中には早くも、北海道らしい緑豊かな大平原が広がり、久瀬さんと楽しく観光している自分を思い描いている。

旅行に誘ってくれたということは、彼の中で私は、ただの会社の後輩以上の存在に違いない。


もしかすると、私のことを好きになりかけていたりして……。


都合のいい妄想が膨らんで、『そんなわけないでしょ!』とツッコミを入れる自分と、『奇跡が起きるかも』と期待する自分が、心の中でせめぎ合う。

興奮して顔を熱くする私は、残そうと思っていた付け合わせのクレソンとラディッシュを無意識に頬張って、「美味しい!」と口走っていた。


「へぇ、野菜も美味しく食べられるのか」


私の新たな一面を見たと言いたげに、久瀬さんは眉を上げる。

それから、「北海道は遠い。泊まりがけだな」とサラリと言って、さらに私を火照らせるのであった。



小百合さんに会いに行こうという話をした日から十日ほどが過ぎた休日、一泊分の荷物を入れた旅行バッグを手に、私は北の大地に降り立った。

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