エリート御曹司は獣でした
ジンギスカンも有名だが、北海道といえば海鮮系のイメージが強いのに、久瀬さんは私に合わせて肉料理の店を調べてくれたみたい。

「はい!」と張り切って返事をした後は、私を喜ばせようとしてくれる彼の気持ちが嬉しくて、胸が熱くなる。


本物の恋人みたいに大事にされてる……。


うっかりそう感じてしまった私は、バッグを持っていない方の手を彼の方へそっと伸ばす。

今なら手を繋いでも、許される気がしたのだ。


けれども指先が彼の手を掠めたら、急に恥ずかしくなり、慌てて手を引っ込めた。


偽恋人の分際で、私はなにを調子に乗っているのよ。

手を繋ぎたいなんて言ったら、久瀬さんを困らせるだけなのに……。


やましい気持ちをごまかすために、私は目を逸らして別の話題を探す。


「札幌って、東京と変わらないほどに栄えていますね。中心部だけでしょうか? 郊外に行けば、牧場とか大自然が……えっ!?」


驚いて自分の手に視線を落とせば、久瀬さんに握られていた。

沸騰しそうに火照る顔を隣に向けると、彼が苦笑いしている。


「そんなに赤面されたら、照れくさいな。放した方がいい?」

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