エリート御曹司は獣でした

「いえ、繋いでいたいです……」


正直な希望を伝え、さらに鼓動を速めたら、握られている手に心地よい力が加わった。


「小さな手。柔らかくて気持ちがいい。放したくなくなりそうだ」


私を見ずにそう言った彼の頬が、薄っすらと赤く色づく。


久瀬さん……照れながら、甘い台詞を言うのはやめてください。

私をキュン死させる気ですか……。


心臓が壊れそうだという心配は、旅行が終わるまでではなく、今日一日持たないのではないかというものに変わっていた。


幸せな戸惑いを抱え、久瀬さんと手を繋いで歩くこと五分ほど。

小百合さんの自宅のあるマンション前に到着した。


十五階ほどの高さのマンションは、外壁に目立った汚れはなく、築年数が新しそうに見える。

シックでモダンなエントランスを潜り、オートロックの自動扉の横で部屋番号を押せば、すぐに応答があった。


《隆広くん、いらっしゃっい。どうぞ上がって》


声の雰囲気からは、可愛らしくおっとりといった印象を受ける。

エレベーターに乗って最上階で降り、突き当たりのドアへ。

私たちがインターホンを鳴らす前に、赤ちゃんを抱いた小百合さんが出迎えてくれて、久瀬さんと彼女は十六年ぶりの再会を果たした。


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