エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは天下の菱丸商事の会長の孫であり、御曹司だ。

その久瀬家と親交が厚い宮永家も、軽井沢に別荘を持てるほどなのだから、資産家だと思われる。

いいところのお嬢様であった小百合さんは、観光業の社長と結婚して、今もセレブというわけだ。


白いVネックのニットと、紺色のスリムパンツというラフな服装の彼女だが、動作や話し方に品があって優雅さを感じる。

優しげな雰囲気があり、丸い輪郭と少々垂れた目元が可愛らしく、実年齢より五歳ほど若く見えた。


素敵な人……。

ほんの少し話しただけで、魅力を感じた私は、もやもやとした不安に襲われる。


子供の頃に久瀬さんが憧れたのが、よくわかる。

見た目も性格も生まれ育ちも、なにもかもが輝いており、私が逆立ちしたって叶うものはひとつもないだろう。


桜色のベビー服を着た赤ちゃんは、陽奈ちゃんというそうだ。

ぷっくりとした頬やむちむちの手が愛らしい陽奈ちゃんも、機嫌よさそうに笑っていて、幸せオーラが漂っている。

きっと小百合さんの母親ぶりも、完璧であるに違いない。


彼女は既婚者であるから、久瀬さんの中に、子供の頃のような恋心が復活することはないと思いたかったけれど……どうだろう。
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