エリート御曹司は獣でした
それはわかっていても、憧れていた女性に向け、私のことを恋人だと紹介してもらえたことは舞い上がるほどに嬉しい。

玄関に上がった時、久瀬さんの恋心が復活するのではないかと危ぶみ不安に思ったが、その気持ちや、ふたりの思い出話に入れない寂しさは、綺麗さっぱり消し飛んだ。

自分の単純思考に呆れてしまうけれど、のぼせそうなひと時の幸せを味わわせてもらう。


偽恋人の分際で、「恥ずかしくてどんな顔をしていいのか……」ともじもじすれば、ふたりに笑われた。

すると、急に陽奈ちゃんが大きな声で泣き出した。


「大声で笑ったから驚かせてしまった? すみません」と謝る久瀬さんに、小百合さんは立ち上がって「違うのよ」と言う。

壁際に置かれているベビーベッドに陽奈ちゃんを寝かせた彼女は、「そろそろお腹が空く時間なの」とテキパキと動き出す。

オムツを取り替えて、手を洗い、陽奈ちゃんを抱いてソファに戻ってくると、ここで授乳すると言う。


慌てたのは久瀬さんで、「俺たちはこれで失礼します」と帰ろうとしたのだが、小百合さんに引き止められた。
< 235 / 267 >

この作品をシェア

pagetop