エリート御曹司は獣でした
「まだたったの二十分ほどよ。もう少し、お話したいわ」

「いや、でも、男の俺がここにいてはーー」

「これがあるから大丈夫よ」


小百合さんはそう言って、薄い布を広げて頭からすっぽりと被った。

それは授乳ケープというもので、人に見られずにおっぱいをあげられる、外出時にはお役立ちのアイテムである。


「隆広くんの照れ屋さんは、変わっていないのね」


おかしそうに笑う小百合さんは、ケープの中に陽奈ちゃんを入れると、ゴソゴソと胸元を探っている。

それまでむずがっていた陽奈ちゃんが、ピタリと泣き止んだので、おっぱいを吸い始めたのだとわかった。


「ね、大丈夫でしょう?」

「そ、そうですね……」


見えなくても、こんなに近くで胸をはだけさせていると思えば、男性である久瀬さんは恥ずかしさを拭えないようである。

おそらく小百合さんは、久瀬さんに対して、弟のような感覚を今も持ち続けているのだろう。

成長して大人になったとわかっていても、彼女の中にいる久瀬さんのイメージは、家族のように親しい付き合いをしていた小学生の少年のまま。

だからこうして、無防備な姿を見せてしまえるのだと、私は考えた。

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