エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは、『俺が誘ったんだからいいんだよ』と言ってくれて、私としてはそこまで甘えていいものかという戸惑いがあるのだが、支払うと申し出ても拒否されてしまったのだ。


しかしながら、申し訳ないという思いは心の隅に追いやられ、今はソワソワと落ち着かない気持ちでいる。

新鮮な刺身と白老牛のステーキがメインの豪華な夕食を堪能し、風情溢れる露天付き大浴場で温泉に浸かり、今は二十二時になったところだ。

四十分ほど前に久瀬さんと一緒に部屋を出て大浴場に行った後、先に戻ってきた私はひとり、畳の上をウロウロしている。


開け放してある襖の向こうの六畳の和室には、ふた組の布団が並べて敷かれ、枕元に置かれた行灯風の明かりに照らされている。

布団をひと組、こっちの本間に持ってきておくべきかと迷っていた。

久瀬さんもきっとそうするつもりで、和室ふた間の部屋を予約したのではないだろうか。


でも……彼に相談なく、勝手に移動させるのはどうなのだろう。

同じ部屋でひと晩を過ごすということを、過剰に意識しているのがバレてしまいそうだ。

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