エリート御曹司は獣でした
座椅子に正座した私は、座卓に向かって鳴り止まないスマホを見つめる。
盆と正月くらいしか顔を合わせないのに、いったいなんの用があるのかと訝しみつつ、恐る恐る通話に出た。
「なに?」と不愉快な声をかければ、やけに明るい兄の声が聞こえる。
《奈々子、久しぶり。明日、実家に帰ってこいよ。どうせ暇だろ? 霜降り和牛五キロ買ったんだ。すき焼きやるぞ》
「すき焼き……。え、本当にお兄ちゃん? まさか、肉肉詐欺じゃないよね?」
私にすき焼きを振る舞うなどと、兄の言動とは到底思えず、詐欺ではないかと疑ってしまった。
それでも兄は機嫌よく、話し続ける。
《実は俺、彼女ができたんだ。明日、初めて親に会わせるんだけど、緊張するだろうし、奈々子がいた方が話やすいと思ってな。お前と同じ年なんだ》
「へぇ、お兄ちゃんに彼女が……」
つまり兄は、恋人が話し相手に困らないようにと、私を肉で釣って、帰省させようというのだ。
一応、真面目に会社員をしている兄は、見た目は普通。
彼女ができてもおかしくない年齢でもある。
けれども妹からすると、人の肉を奪うような碌でもない人間であり、そんな男と付き合って大丈夫かと彼女に問いたくなった。
盆と正月くらいしか顔を合わせないのに、いったいなんの用があるのかと訝しみつつ、恐る恐る通話に出た。
「なに?」と不愉快な声をかければ、やけに明るい兄の声が聞こえる。
《奈々子、久しぶり。明日、実家に帰ってこいよ。どうせ暇だろ? 霜降り和牛五キロ買ったんだ。すき焼きやるぞ》
「すき焼き……。え、本当にお兄ちゃん? まさか、肉肉詐欺じゃないよね?」
私にすき焼きを振る舞うなどと、兄の言動とは到底思えず、詐欺ではないかと疑ってしまった。
それでも兄は機嫌よく、話し続ける。
《実は俺、彼女ができたんだ。明日、初めて親に会わせるんだけど、緊張するだろうし、奈々子がいた方が話やすいと思ってな。お前と同じ年なんだ》
「へぇ、お兄ちゃんに彼女が……」
つまり兄は、恋人が話し相手に困らないようにと、私を肉で釣って、帰省させようというのだ。
一応、真面目に会社員をしている兄は、見た目は普通。
彼女ができてもおかしくない年齢でもある。
けれども妹からすると、人の肉を奪うような碌でもない人間であり、そんな男と付き合って大丈夫かと彼女に問いたくなった。