エリート御曹司は獣でした
霜降り和牛のすき焼きは食べたいし、積年の恨みを込めて、彼女に兄の本性をバラしてみたい気持ちもあるが、明日、東京に帰るのは夜遅くなってからの予定である。

夕食時には間に合わない。


「残念だけど今、旅行中で、北海道にいるんだよね。行けないよ」


そう返事をすれば舌打ちが聞こえ、《モテない女同士で寂しく旅行かよ。使えない奴だな》と悪態をつかれた。


他人にモテないだろうと言われても、その通りだと認めるだけで怒ったりしないが、相手が宿敵の兄なので、反論せずにはいられない。


「女友達じゃなく、男の人とふたりで旅行してるんだよ!」

《嘘つくんじゃねーよ》

「本当だよ。社内で人気ナンバーワンのものすごいイケメンで、誠実で紳士で優しくて、エリートで御曹司。そんな人と一緒にいるんです!」


事実を話しているのに、兄は少しも信じてくれない。

《ははん。さてはお前、悔しいんだな?》とバカにしたように言われ、肉のことしか頭にない私に、彼氏ができるはずはないと決めつけられた。


《しょうもない嘘をつかずに、帰ってこいよ。うまい肉、食わせてやるから》


怒りが頂点に達した私は、返事をせずに電話を切り、スマホを座卓に置いて頬を膨らませる。


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