エリート御曹司は獣でした
すると、また着信音が鳴り響く。

しつこく兄がかけてきたのかと思ったが、今度は父からであった。


「はい」と不愉快さを引きずった声で電話に出れば、《あー奈々子か。父さんだ》と、なぜか父は言いにくそうな声で話しだした。


《父さんは、奈々子が明るくていい娘だと思ってるぞ。自信を持て》

「なんの話……?」

《明日の話だ。十八時に、すき焼きを始めるからな。待ってるぞ。きっとお前にもそのうち恋人ができるから、そう怒らずにーー》


どうやら兄が電話をかけてきた時、そばに父もいたようだ。

兄から一方的な説明を聞いて、モテない私が拗ねて帰らないと言ったと勘違いし、父は哀れんだみたい。


「帰れないよ。明日まで彼氏と旅行中なの!」


父に恨みはないけれど、語気荒くそう言って電話を切る。

「もう、なんなのよ……」と口を尖らせた後に、久瀬さんのことを“彼氏”と言ってしまったことに気づいてハッとした。


嘘ついちゃった。

勝手に彼氏呼ばわりして、久瀬さん、ごめんなさい……。


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