エリート御曹司は獣でした
悲しいような、恥ずかしいような気分にさせられて、ため息をつく。

そしてスマホを座卓に置こうとしたのだが、またしても鳴りだした。

今度は誰かと眉を寄せて画面を見れば、香織である。


「もしもし?」と目を瞬かせて電話に出れば、ガヤガヤと賑やかな背景音に被せて、香織の明るい声がする。


《あ、奈々子。遅くに悪いんだけど、これから出てこれない? 今、高校時代の友達と飲んでるんだ。奈々子の話をしたら、みんな面白がって、会ってみたいんだって》


久瀬さんと旅行に行く話は、香織に教えていない。

偽恋人だと言ってあるし、ポン酢変身体質や小百合さんのことは、説明できないからである。


お酒が入ってテンションの高い香織は、《彼女募集中の男もいるよ。奈々子に彼氏ができるチャンスかも》と 笑いながらメリットを提示する。


久瀬さんの変身体質を知る前の、ただ憧れていただけの時なら、行ってみようかという気持ちなったかもしれないが、今はそんな気分になれない。

もちろん距離的にも、参加は不可能である。

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