エリート御曹司は獣でした
「もう少しの我慢です!」と彼を励ましながら私は矢印の方へと曲がり、細い通路に入った。

男女別のお手洗いの他に、多目的トイレがあったので、迷わずそこに駆け込み、ドアに鍵をかける。


なんとか間に合ったかな……?


そう思ってホッと気を抜こうとしたら、後ろから、私を囲うようにスーツの腕がドアに突き立てられた。

背中に久瀬さんの体温を感じ、耳に色気のある声を吹き込まれる。


「俺とふたりきりになりたかったのか? エロいな、お前。なにされたいのか、言ってみろよ」


久瀬さんは完全に狼化しており、今度はそのことに慌て始めた。


ど、どうしよう。

今日はなにも作戦を立ててきていない。

元の彼の意識を呼び戻せるような仕事の話も、すぐには思いつかない。

時間が経てば正気に戻るのは知っているけど、三分間、どうやってしのぐ……?


焦りの中でひらめいたのは、しりとりだ。

古今東西、老若男女の時間潰しといえば、しりとりでしょう!

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