エリート御曹司は獣でした
その後は、大食漢の長野さんが満腹になるまで付き合い、寿司店を出てからは、同じホテルの最上階にあるバーラウンジでお酒を飲みながら、仕事の話を軽くした。

『今後もよろしく!』と上機嫌に言ってくれた長野さんたちと別れたのは、二十二時半頃。

まだ公共機関は動いているため、私は電車で自宅マンションまで帰ってきた。

私の住む地域は治安がよく、駅からマンションまでは大通り沿いを歩くため、ひとりでも大丈夫だと言ったのに、久瀬さんが送ってくれた。

『夜道をひとりで歩かせたくない。送らせて』との彼の言葉に、ときめいたのは内緒である。

七階建てマンションのエントランスの前で足を止めた私は、久瀬さんに頭を下げた。


「今日はありがとうございました。望月フーズさんといい関係を続けられそうで、ホッとしています。全て久瀬さんのおかげですね。今後はご迷惑をかけないよう、気を引きしめて仕事します」


感謝と今後の抱負に続いて、『お疲れ様でした。おやすみなさい』と別れの挨拶をしようとした私であったが……寒そうにコートのポケットに手を入れている彼を見て、ふと考えた。

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