契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
倉田の言う通り、俺が餡子を食べられないことは早い段階で両親に気づかれてしまい、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
こんな状況になるなら、やっぱり叶夢が息子としてもらわれていった方がよかったんじゃないか。そんなことを思って落ち込む俺を、両親は責めることなどなかった。
「餡子が食べられないからって、和菓子屋の社長になれないわけじゃない。うんと勉強して、食べられない分を知識で補えば大丈夫だ」
「そうよ、彰。あなたが何を苦手であろうと、私たちの息子であることに変わりはないわ」
そう言ってくれる二人は俺にはできすぎた両親で、俺は恩返しのために必死で勉強した。
和菓子のことはもちろん、父親の跡を継ぐための経営学、世界に目を向けるための語学。
そして、内向的な性格を変えるため、積極的に人と会いコミュニケーションスキルを磨いた。
大学卒業後に道重堂に入社し、数年間営業職についたのち、専務取締役を経て、昨年社長になった。ひとつの節目としてそのとき自宅を購入し、一人暮らしを始めた。