契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「……別に謝る必要はないよ。お前が可愛くてどうしようもなくて、今から後部座席に移動してどうにかしてやろうとか思う俺のよこしまな肉欲の方が問題」
彰さんは一気にまくしたて、運転席のシートに背中を深くもたれさせるとはぁっと息をこぼす。
私はというと、今のセリフを脳が処理しきれずに、ぼうっとしながら頬を熱くしていた。
彰さん、まさか車の中で行為に及びたくなっちゃうほど、興奮してるってこと?
それに肉欲って……ものすごい直接的な表現すぎて、どう返したらいいのか……!
私が軽いパニックに陥っているのに気づき、彰さんは落ち着かせるような声で言う。
「……大丈夫だよ、結奈。ちゃんと帰ってから、ベッドの上で抱く。まぁその代わり、ベッドの上では容赦しないけど」
けれど、このセリフでパニックを脱却できるはずはなく。
「今から覚悟しておけよ? 今夜は、眠る暇なんか与えないからな」
心と体を甘く疼かせるそんな命令に、私は従うほかなかった。
「は……はい」
消え入りそうな声で返事をすると、彰さんはようやくエンジンをかけて車を発進させた。
けれど車内にはキスの甘い名残と、互いに堪えている欲情が濃密な空気となっていつまでも漂い、家に着くまでのわずかな時間すらもどかしかった。