契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
ようやく帰宅し、車を車庫に入れた彼は、私の手首をがっちりつかんでずんずん庭を進んでいく。
「くそ……この庭、広すぎるんだよ」
彰さんらしからぬ、忌々し気な口調がおかしくて、私はクスっと笑う。
「家を建てる時に彰さんがこだわったから広くなったんですよね?」
「まぁな。……ああ、鍵を開けるのも面倒だ」
早足で玄関にたどり着いても、彰さんはまだはやる気持ちを押さえられないらしい。キーケースから鍵を選んで取り出す簡単な作業にも手間取っていて、なんだか可愛らしい。
「落ち着いてください。私、逃げませんから」
そう言って彼をたしなめていると、鍵を見つけた彼が手早く玄関のドアを開き、私を家の中へと引っ張りこむ。
それから、とうとう我慢の限界だというように、逞しい腕の中に私を閉じ込めた。
「落ち着いてられるかよ。……可愛い嫁を、初めて抱けるこの夜に」
「彰さん……」
うれしすぎるよ。〝可愛い嫁〟だなんて……。