上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「まぁ、結城はここで収まる男ではないと思っていたからな。何かあれば協力するから遠慮なく言えよ!」
「ありがとうございます」
俺は半年後にこの会社を辞めて、すでに兄と姉がいる親父の会社“ リゾートホテル縁 ”に入る事になっている。
親父は元々強制するような人じゃなく俺たち兄弟は昔から好きな事をすればいいと言われて育ってきた。
だが俺たちは初めから親父の会社に入る事を望んだ。
“ リゾートホテル縁 ”は現在国内一の人気ホテルとなり、俺たちは親父一人でここまで築き上げた会社を、自分たちの手で守り続けていきたいと思っているのだ。
俺は大学時代、経営学を学んでいる時にブランド力を高める事が会社の永続に繋がるということにいきついた。
もちろんそれが全てではないが、どちらかと言えばホテル内で働くより裏で経営企画を立てる方が向いていると自分でも分かっていた。
大学卒業後すぐにファミリー企業に入るより別の会社に入り一社員として揉まれた方が、自分の為になると考えた俺は今の会社に入った。
その時面接官だった橋本さんに気に入られ、ずいぶんシゴかれてここまで成長した。
橋本さんには感謝してもしきれない、俺にとって尊敬できる先輩だ。
仕事の事や世間話を1時間ほど話して俺は橋本さんの部屋を後にした。
会社を辞める事を亜子にも話さないといけない。辞めたところで亜子との仲が変わらなければそれでいいのだが今の俺にはそれが不安でたまらない。
亜子はデザインの仕事がしたくてこの会社に入ったと聞いた事がある。
迂闊に付いてきてほしいとは言えないな。第一仕事内容が違いすぎる。
さて、どうしたものか……。
エントランスまで降りてそんな事を考えながら歩いていると後ろから亜子が鞄を持って俺の横を走って通り越して行った。