上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
それから数時間経った頃俺のいる病室のドアがノックされ、亜子の兄と名乗る男が俺に話しかける。
「すみません、今母の手術が終わりました。亜子の様子は?」
「少し前までパパママと譫言のように言ってましたがまだ気を失ったままです」
「……そうですか。それはそうと挨拶が遅れまして、亜子の兄の藤井涼太と申します。来る途中亜子から連絡をもらって上司の方に車で送ってもらってると聞いてました。本当にありがとうございます」
亜子の兄は礼を言って俺に深々と頭を下げた。
「結城と申します。それよりお母さんの様子は大丈夫ですか?」
「ええ、難しいと言われましたがどうにか成功しました。しばらく集中治療室で回復を待って普通病棟に移れるようです。それよりもうこんな時間ですが今日はどうされるおつもりですか?」
「あぁ、その辺のビジネスホテルにでも泊まろうかと。元々近いうちにこの辺りに来る予定でしたので明日はそこに寄って帰るつもりです」
ここに向かう途中、この連休中に来る予定だった場所が思いもよらず近いことを知ってはじめから泊まる予定だった。
それに出張の多い俺はすぐ出れるように泊まる為の用意も常に車の中に準備してある。
「本当でしたら家に泊まってもらいたいのですが、亜子もこの状態ですし今日は父も私も病院に泊まることにしました。また後ほど挨拶にお邪魔させていただきます」
「どうかお気を使わずに。明日迷惑でなければもう一度こちらに伺わせてもらいます。藤井さんの様子も気になりますので……」
「私たちは構いませんよ。明日は母の状態を見て私は仕事に出る予定なので父と亜子に伝えておきます」
俺は亜子を兄に任せて病院を出た後、携帯で近くのビジネスホテルを探し今夜はそこに泊まることにした。
シャワー浴びてコンビニで買ってきたビールを飲みながら窓の外を眺める。
亜子の兄とは、以前会社の前に車で来た時に目が合ったと思ったが俺だと気づいていない様子だった。
本当はこのまま亜子の側にいたいと思ったが、ただの上司だと思われてる俺がそこまでするのはおかしいというものだ。
俺はベットに横になり、やりきれない思いを抱きながらいつのまにか眠りについていた。