上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「あの時はいろいろあって……」
「まぁ、喧嘩くらいあるよな」
喧嘩か……。
思えば喧嘩なんてしたことないかも。
「で、結婚とか考えているのか?」
「け、結婚⁉︎」
びっくりして思わず洗っていたお皿が手から落ちる。
「な、何言ってるの? 結婚なんて考えてないよ」
「そうなのか? でもそろそろ考えた方がいいぞ。亜子だってもうそんなに若くないしな」
私まだ27ですけど!
そんなこと言うなら30過ぎてる涼太が先でしょ!
「私も結城課長も結婚なんて考えてないよ」
「そうか? 彼はちゃんと考えてると思うけどな」
「そんなことあるわけないじゃん! どこからそうなるわけ?」
結婚に憧れはあっても結城課長となんて考えたこともなかった。
半分呆れ顔な私にそれでも涼太は笑いながら意味深なことを言う。
「真っ直ぐな目だったからな。結婚決まったらちゃんと言えよ!」
涼太はそう言って自分の部屋に戻っていった。
結婚なんて……ないよ。
結城課長だからとかじゃなくて、この先誰と付き合っても結婚は想像できない。
好きな人と結婚して子供を産んで家族になるなんて……私には到底叶うことのない非現実的なこと。
目を閉じて今朝の結城課長の言葉を思い出す。
“ 俺を信じてくれ ”
もっと早く聞けていたら素直になることができたのかな。
今朝会ったばかりなのにもう会いたいと思う。お母さんのことは心配だけど、穏やかな気持ちでベットに入った私はひさしぶりに熟睡することができた。