上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「母さん、目が覚めて自分が倒れたなんて知ったらどんな顔するだろうな」
「ははっ、それこそまた倒れるんじゃないの」
お父さんの言葉に涼太は冗談を交えて笑ってみせる。
お母さんが聞いていたら何て言うかな。私もつられて少し笑いながらお母さんを見ると一瞬瞼がぴくりと動いたように見えた。
「お母さん?」
私の言葉でお父さんと涼太も一斉に見る。
たしかに今動いた!
「お母さん!」
お母さんの手を握るとわずかに動く指先を感じる。
私たちが見つめる中、ゆっくりと瞼が開いてお母さんの目が私たちを捉える。
私を忘れてる?
恐れていた不安が胸を衝く。
「お母さん……」
震える声で私はもう一度呼んでみた。
お母さんはゆっくり口を開いて声を出した。
「亜子……。仕事は?」
私を呼んだお母さん声は少し掠れていたけれど、覚えてくれていたことにホッとして涙が溢れていた。
その後すぐに先生と看護師さんが急いでやって来てお母さんにゆっくり話しかける。
お母さんは先生たちの質問に返事と相槌で答えたりして、お父さんや涼太とも少し話をすることができた。
約2日ぶりに目覚めたお母さんは、まだ少し怠そうだけど時折笑顔を見せてくれて私たちを安心させてくれた。