上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
食事を済ませると結城課長は「部屋に行こう」と言ってルームキーを見せた。
私の腰に手を回しグイッと体を密着させる。
「ち、ちょっと結城課長!」
「こうでもしないとまた逃げるだろ」
……逃げはしないけど、どことなく周りの目があって恥ずかしい。
二階建てのこのホテルは客室が本館と別館に分かれているようで私が連れてこられた部屋は別館のスイートルームだった。
部屋は家がそのまま入ったような広さほどあって、まるで別世界に迷い込んだみたいな錯覚を起こすほどだ。
「結城課長こんな場所に泊まるんですか?」
「だから俺はもう結城課長じゃないって」
後ろから私を抱きしめて耳元で囁くように言ってくるからなんだかくすぐったい。
「名前で呼んで」
「え? 今……ですか?」
「そう、今」
私をくるりと向かせるて目を合わせる。
なんか前にもあったような……。
でもお互い会社を辞めてるとなればたしかに結城課長と呼ぶのは変な話だ。
「……結城さん?」
「は? それわざとだろ。名前で呼べって言ったの聞こえてないのかよ。ほら、早く呼べって」
口角をクイっと上げて意地悪っぽい顔をして私に近づく。
「た、尊さん」
とっさにそう呼ぶとフワッと抱きしめられる。数秒したのち少し離れて、私の両手を握りしめながら真剣な目で尊さんが話し始めた。