上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
するとソファーにかけて様子を見ていた年配の男性が私たちに「まぁ、とりあえずかけなさい」と勧めてくれた。
ちょうどその時リビングの奥の方から女性が2人現れた。
「あら、やだ。着く前に電話してって言ったじゃない」と言いながらあわててお茶の準備をしてくれる。
テーブルの上に並んだ紅茶はとてもいい香りで部屋いっぱいに広がっている。
結城課長のご家族はご両親の他にお兄さんの仁(じん)さんとお姉さんの玲(れい)さんがいて、結城課長は末っ子らしい。
「尊がいつも世話になってるね。 尊はこの通り愛想がなくてつまらない男かもしれないが、 どうか見捨てないでやってほしい」
「そうよ。 こんなに可愛らしい方なんだから大切にしないと誰かに奪われるわよ!」
そう言ってお父様もお母様も優しい笑顔で私に話しかけてきてくれた。
正直もっと冷たくあしらわれると思っていたのに結城課長のご家族は私のことを暖かく迎え入れてくれてた。
「ホント良かったわね、 尊! あんたにはもったいないくらいよね」
「うるせぇなー」
「玲、 あんまりからかうなよ」
会社では仕事ができてイケメンで完璧なのにここではそのスキルは無意味なのね。
家族皆んなが結城課長を大切にしているのがすごく伝わってくる。
「そろそろランチにしないか? 場所はCucina(クッチーナ)だ。 尊も覚えているだろう?」
結城家でよく行くイタ飯屋さんがあるらしい。ソファーから立ち上がりふと右側に目を移すと、壁に沿って見たことのあるキャビネットが立っていた。