上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
彼の秘密

街はまだ肌寒い日が多いけれどビルで覆われている東京にいても頬に当たる柔らかい風や匂いで春はもうすぐそこまできているのがわかる。


私の勤める会社は東京のビル群の中でもわりと大きめなビルの中にあるデザイン会社。
名刺やクライアント先の会社ロゴ作成から商品のパッケージデザイン、 CM制作なども請け負っていてデザイン会社の中でも大手企業のほうである。


中でも私が所属しているWEBデザイン課は少人数から成り立つチーム制で業務を行っていて主にクライアント先のホームページの管理やロゴデザインを担当している。


ここ最近の私はというと、もうすぐ締め切りが迫ってるロゴの作成をあーでもない、こーでもないと満足いくまでやり直し続けてばっかり。


「ちょっと藤井先輩、聞いてくださいよ〜」

お人形さんみたいな大きな目をキラキラさせて甘えた声でやってきた彼女は後輩の冨樫恵菜(とがし えな)ちゃん。
甘え上手で顔も可愛いくてその上小柄な彼女はまさに世の男性達が守ってあげたいタイプなのだろう。

「恵菜ちゃん、何かあったの?」
たいしたことではないだろうと思いながらもとりあえず聞いてみる。


「今日、3日振りに結城課長見ましたぁ!」
結城課長という名前を聞いて一瞬心臓がドキンと跳ねる。

「世の中にあんなイケメンいるんですね〜」

“はぁー” とため息のような息を吐く恵菜ちゃんをチラッと見れば、瞳はうっとりしていてまるで結城課長に恋しているように見える……。


“まさかね?”
心臓が違った意味でドキドキしてくる。


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