上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
『……うん』
横断歩道を渡って涼太に近づくにつれてついさっきまでズキズキと苦しかった胸のあたりがフワッと和らいでいくのがわかった。
雨は少しずつ強くなっていて俯きながら歩く私はいつの間にか泣いていて涼太の元に着いた時にはメイクが崩れてぐちゃぐちゃになっていた。
「なんだ? 都会が辛くて帰りたくなったか? こっちはいつでもいいんだぞ」
涼太はクスッと軽く笑いながら私に話しかける。
「違うもん! ちょっと気が緩んだだけ」
涼太には隠し事をしても必ずバレるから嘘を吐いてもしかたない。
「なんでこっちに来てるの?」
「ん? まぁな。 取引先との打ち合わせで来たんだが、ついでに明日亜子を連れて帰ろうと思ってな。 まさか忘れてないよな?」
「忘れてないよ! お母さんの誕生日でしょ。
今年はちゃんと行くんだから!」
「まぁそう怒るな。 とりあえず飯にするぞ。 裏の通りに佐山を待たせてるんだ、行くぞ」
涼太はそう言うと私が雨に濡れないように背中に腕を回し引き寄せるように傘に入れてくれた。
一本裏の通りまで歩いて行くと駐車場に車を駐めて傘をさして待っている人影が見えた。
「亜子さん、 おひさしぶりです。 お元気でしたか?」
「はい! 佐山さんも元気そうですね!」
暗くなってきたのもあって泣いた顔はバレなくて済みそうだ。
佐山さんが後部座席のドアを開けてくれて私と涼太は車に乗り込む。
「いつもの場所でいいだろ? それとも他におすすめあるか?」
私に確認してくるけどそんなに知ってるわけじゃない。
「ううん、 まかせる」
そう言うと涼太は、よし!と頷き「佐山、頼む」とだけ伝え車はゆっくりと動き出した。