上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
それまでなんともなかった結城課長は私の言葉で急に顔が曇り出した。
あれ? 私何か変なこと言った?
目の前の結城課長はどんどん不機嫌になっていく。
「あの……どうかしましたか?」
沈黙に耐えられず恐る恐る私から聞きだすと、黙っている結城課長はハァーと大きなため息を吐き出してジッと私を見つめてきた。
不機嫌な時の結城課長の顔は本当に怖い。
思えば付き合い始めてからこんな顔をしてくるのは最近までなかったと思う。
やっぱり矢野さんの事が原因なのかな。
目を合わせているのが辛くなって俯く私を見て結城課長はようやく口を開いた。
「結城課長って何?」
「え?」
訳の分からない言葉に思わず声が裏返った。
「俺の名前は結城課長じゃねーけど」
「あっ……」
もしかして名前で呼ばなかったから機嫌がわるかったの?
意味が分かったけど思わぬところを指摘されてなんだか気まずい。
「……あの、やっぱりこのまま結城課長って呼ぶの駄目ですか?」
「駄目だ」
勇気を持ってお願いしてみるけどあっさりと却下される。
だからと言ってもう名前で呼ぶのも抵抗がある。
私は黙ったまま再び俯きがちにしていると結城課長はもう一度ため息を吐いて話し始めた。
「亜子。駄目なものは駄目だ。それは譲らない」
はっきりと言い切る結城課長はまっすぐに私を見て「それと」と付け加える。
「帰ったら話がある」
ズシンと胸の奥が重くなったのを感じた。
「……はい」
私はこの時どんな顔をして返事をしたのか覚えていない。
ただ泣かないように目に力を入れて一点を見ているしかなかった。
そこからは食欲もなくなって何を食べても味がしなくなっていた。