上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


お店を出て大通りに出てからタクシーに乗り込むと結城課長は自宅までの道のりを伝えてから背もたれに寄りかかった。


なんて言われるのかな……。
このまま着かなければいいのに。
どちらにしてもいい話じゃないのはなんとなく分かる。

……思えばいつもそうだった。

なんてことない時にいきなり相手から別れを告げられるんだ。
「他に好きな人ができた」って。


今まで突然そんなこと言われても “ あぁ、そうか ” で終わるのに今日は違う。
心臓が壊れそうなくらいドクドク鳴ってる。




別れたくない…………。
込み上げてくる想いが本当の気持ちなんだと気づいてしまった。


私、本気で結城課長を好きなんだ。
今更気づくなんてまぬけすぎる。

意識すればするほどタクシーの狭い車内は私の呼吸をより一層乱そうと息苦しさを感じさせていく。
冷静になる為に窓から流れる景色を見ていると、時刻はまだ夜の9時を回った頃で歩く人はまばらだけど自分の心とは正反対に街はキラキラしていて楽しそうに見えた。


何も考えずにただぼんやりと眺めているとタクシーはあっという間に結城課長のマンションの前まで着いてしまった。

タクシーから降りると結城課長は私の手を取り一緒に歩き始めた。
先程通った大通りとは違って住宅街のこのあたりはシンと静まり返っていて靴音がやけに響いて耳に残る。
するとちょうど向かい風と一緒に人の声が聞こえてきた。


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