ヴァンパイア夜曲
シドは、こちらへ視線を向けた。
「そのロザリオ、全員がしているわけじゃないんだな。てっきり、シスターの装飾品だと思ってた」
胸元に光るロザリオのネックレスを指しているようだ。
私は微かにまつ毛を伏せ、遠い瞳で十字架を見つめた。
「これは、もともとマーゴットが私の兄に渡したものなの。兄がここを出て行くとき、私が譲り受けたのよ」
シドは、さほど興味がないように「ふぅん」と呟き、やがて何かを考え込むように黙り込んだ。
沈黙が続く中、私は黒いコートの彼にふいに尋ねる。
「貴方は?なぜあんな森の中で倒れていたの?」
「あ?」
「いいじゃない、教えてくれたって。私のことばかり喋るのは不公平でしょう?私も、貴方の事を知りたいの」
一気に低い声になった彼。
やはり、自分のことを詮索されるのは嫌うらしい。
しかし、あの無数の傷を受けて命の危険にさらされるなんて普通ではない。聞きたくなる方が自然である。
私は、思い当たる節をおずおずと告げた。
「もしかして、スティグマにやられたの…?」