ヴァンパイア夜曲
“スティグマ”
それは、凶暴化したヴァンパイアの呼び名である。
この国は古くからヴァンパイアと人間が共存しており、種族が違うもの同士が出逢ったり結ばれたりすることも当たり前の世の中だった。
しかし、ある事件をキッカケに凶暴化するヴァンパイアが目撃されるようになってから、その平和な共存関係は崩れ去ったのだ。
ヴァンパイアは子どものうちは普通の人間と同じ生活を送れるが、大人になるにつれ三大欲求の他に吸血欲という本能が現れ、食事だけでは満たされなくなる。
そして、吸血欲が振り切ってしまい、自我を忘れて他人や街を襲うレベルまで堕ちたヴァンパイアはスティグマの烙印を押され、国の軍の執行対象となるのだ。
彼の反応から見て、スティグマに襲われたというのは図星らしい。だが、私はイマイチ納得できない。
「今のベンタウン地域は人間の割合が多いはずだわ。スティグマなんて、滅多に出くわさないと思うけど」
「平和ボケしたシスターならそうだろうな」
わざわざ悪態を吐くような言い回し。
本当にこの男は口が悪い。
もっと素直になれないのか、と私は睨み飛ばすが、しれっとした彼はどこ吹く風である。