ヴァンパイア夜曲
「もしかして、“グリムリーパー”っていうのが関係あるの?」
私の放ったその単語に、彼がぴくりと肩を震わせた。
「貴方の身分証に書いてあったわ。あのカード、グリムリーパーっていう職業のライセンスなんでしょう?」
私は、その職業について聞き覚えがなかった。
国の北西の外れにある、争いやトラブルなどが起こらない平和な農村地帯に長く住んできた私には、どうやら縁のない職業らしい。
「死神」
「え?」
「グリムリーパーは、死神を意味する言葉だ。俺の仕事は、そう呼ばれている」
やっと答えてくれたが、ますます分からない。
栄えた都市でなら有名な職なのかもしれないが、私は彼の出で立ちや振る舞いからマフィアの類ではないだろうか、なんて考えていた。
(あり得る。この無愛想で口が悪くて不良のような威圧感のある男が所属しているなら、何かの犯罪組織なのかもしれないわ)
もしかしたら私は、相当タチの悪い男を匿ってしまったのかもしれない。
都市の警察が、この男を探して押しかけて来たりでもしたらどうしよう。
(そのときは問答無用で身柄を差し出そう)