ヴァンパイア夜曲
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やがて、シドと出会ってから一週間が経った夜。フクロウの鳴き声がかすかに聞こえる。
修道院の生活に溶け込んできた彼がシスターや子どもたちからチヤホヤされ出したのがなんとなく気に入らなくなった頃。私は入浴を終えて一人、部屋へ戻ろうと廊下を歩いていた。
木々に囲まれた修道院は、夜になると気温が下がる。
月明かりが差し込む大理石の廊下は特に冷えていて、シスターの制服を脱いだナイトウェアでは肌寒かった。
その時。修道院の裏手に、すらりとした男の影が見えた。月明かりに照らされたその顔はシドである。
ぼそぼそと何かを話しているらしい。そして、その手には以前彼の鞄に入っていた通信機があった。
(一体、どこに連絡を取っているんだろう…?)
急に、どきん、と胸が鳴った。
好奇心から、つい、彼へと近づいていく。
こっそり会話を盗み聞けば、自分のことを話したがらない謎に包まれた彼のことが少し分かるかもしれない。
気付かれないように息を潜めて柱の陰に隠れると、低く艶のある声が聞こえてきた。
「あぁ、俺の現在地だ。ベンタウン地域の北緯50度。ここから城まではどのくらいある?」