ヴァンパイア夜曲

一瞬目を見開いたナディは、ふっ、とまつ毛を伏せた。沈黙は肯定だ。

まさに、ここはあのローガスが生まれ育った町。ティアナの日記に挟まれていた写真が何よりの証拠である。

しかし、私の頭に浮かぶのは多くの疑問だった。


「…この写真が撮られた日付は“30年前”。いくらヴァンパイアだとはいえ、そんな昔から姿形が全く変わらないなんて計算がおかしいわ。今、ローガスはおじさんになっていてもおかしくないのに。」


私の言葉に、一同が黙り込む。

すると、ナディは静かに語り出した。


『…ローガスさまの時は、ある日を境にずっと止められていたの。彼は“一度死んだ身”だから。』


(え…?)


どきり、とした瞬間、ナディは私たちを見つめて話を続ける。


『…あれは、ちょうど今から30年前。姉さまの日記を見たのなら察しているとは思うけど、姉さまとローガスさまは恋仲だった。純血のお姉さまと混血のローガスさまは身分が違うことを気にしてお互い口にはしなかったけど、私の目から見れば二人の気持ちは明白だったわ。』


< 169 / 257 >

この作品をシェア

pagetop