ヴァンパイア夜曲
ナディは、二人の写真を撫でて呟いた。
『…でも、ある日。町で有名な純血の家柄を継ぐノースという男がお姉さまの婚約者として現れた。』
「純血を保つことを考えれば、ノースさんと結ばれることが自然だった、ってことね?」
『えぇ。…だけど、お姉さまはローガスさまを忘れることが出来なかった。だから、院長様に、純血の血筋を絶ってでもローガスさまと結婚することを願い出たの。』
今よりもさらに身分の差が激しかった時代に、それはどれほど覚悟が必要だったことだろう。
最悪、勘当されてもおかしくないほどの大事件だ。親と縁を切ったとしても愛する者を選ぶなんて、二人の間に芽生えた気持ちは相当のものだったらしい。
…と、その時。『…ただ…。』と言葉を詰まらせたナディ。
シドとランディが眉を寄せると、彼女は苦しげな表情でぽつり、と続けた。
『お姉さまがローガスを選んだことを知ったノースは、ローガスさまを亡き者にして夫の座を奪い取ろうと画策した。…そして、運命の夜。呼び出されたローガスさまは、ノースが秘密裏に雇った殺し屋によって心臓に杭を打たれ、時間を止められてしまった。…お姉さまが自分を選んだことも知らぬままね。』
「「「…!!!」」」