ヴァンパイア夜曲

それは、とても信じがたい話だった。

恋人を奪った男に呼び出され、襲われたローガス。きっと、抵抗しても敵わなかったはずだ。純血のヴァンパイアは桁違いに強い。

ノースは、自分よりも弱く、なんの権威も持たないローガスに好きな人を取られたことが許せなかったのだ。純血としてのプライドをズタズタにされて、犯行に及んだ。


『…翌日、何も知らないお姉さまの元にやって来たノースは、ローガスさまが亡くなったと告げた。白々しく、自分が犯人だとは言わずにね。』


やっと、あの日記の意味がわかった。

散りばめられた疑問の点と点が、ひとつの線になっていく。

ーーと、その時。シドがわずかに碧眼を細めて口を開いた。


「…どうも、腑に落ちねえな。心臓に杭まで打たれたローガスが、どうして今、時を超えて蘇ったんだ?…しかも、奴がはじめに現れたのは、ここからはるか西のベンタウン地方にある薔薇の廃城。死体がゾンビのように動くわけねえよな?」


はっ!とする私とランディ。

すると、数秒の沈黙の後、ナディが覚悟を決めたように語り出した。


『…実は、ローガスさまが亡くなった事件の後、どうしても信じられなかったお姉さまは事件のことを調べ上げた。そしてついにノースの雇った殺し屋を突き止めて、ローガスさまの死体が馬車で西に運ばれていったことを知ったの。』


「まさか、証拠隠滅をはかって、遠くの土地に捨てるために…?」


『えぇ。…情報を聞いたその日の夜、お姉さまは私を連れて家を出た。誰にも言わずに。…もちろん、どこかに連れ去られたローガスさまを見つけるためにね。』

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