ヴァンパイア夜曲
記憶のフタをこじ開けるように、ナディは無表情のままそっ、と告げる。
『…そして、ローガスさまが姿を消してから20年後。お姉さまはついに見つけたの。ベンタウンの深い森の奥で雪に埋もれる棺桶を。』
(…!)
ベンタウンに降り積もる雪のせいで腐敗が止められていたローガスの体。
杭を打たれ、いわば“仮死状態”になっていたローガスは、まだ死んではいなかったのだ。
ーーシャラ…
その時。ナディが懐から小さな“首飾り”を取り出した。その鎖の先についているのは、黄金のロザリオ。
「これは…?」
『お姉さまがいつも身につけていたロザリオよ。…お姉さまはこれを差し出して、“一人で町に帰りなさい”と私に告げたの。』
ーーー
ーー
ー
“ーー何故です、お姉さま…!今さら私に帰れだなんて…。”
“お願い、ナディ。ここからは、二人きりでなければならないの。”
“……!…まさか、ローガスさまの胸の杭を抜くつもりじゃ…!”
“…えぇ。…きっと、長い間血に飢えていた彼は、目を覚ました後に必ずスティグマになるでしょう。”
“なんてことを…!欲に溺れ、地に堕ちたスティグマをこの世に生み出すことは禁忌のはずです!お姉さまもわかっているでしょう?”
“…もちろん。…でも、彼を救う手はまだあるわ。”
ーーはっ!とした。
脳裏をよぎった最悪の結末に、どくん、と心臓が震える。
「…まさかティアナさんは、自分の血を吸わせて、ローガスに自我を取り戻させようと…?」
『……。』