ヴァンパイア夜曲


その沈黙は、肯定だった。

シスターであるティアナさんがロザリオを外した理由。それは、これから自分のしようとしていることが、淑女の道から外れると知っていたから。

それを分かっていてもなお、彼女はローガスを蘇らせようとしたのだ。


『私は、泣きながら町へ戻った。結局、お姉さまと会えたのはそれが最後。』


「…つまり、今ローガスがこの世にいるのは、ティアナさんが血をあげたからだと…?」


『…きっと、ローガスさま本人は分かっていないでしょうけどね。目覚めたばかりの自我を失った状態で“誰”の首筋に牙を突き立てたのか。“誰”の血で生きながらえたのか。…おそらく、自我を取り戻したとしても気づかなかったかも知れないわ。お姉さまは、ローガスさまが時を止められた時よりもだいぶ歳をとっていたから。』


ローガスの胸の杭を抜いた時。

彼に血を吸われている時。

ティアナさんはどんな気持ちだったのだろう。

容赦ない牙に、きっと血を吸い尽くされることは分かっていた。自分が引き換えに命を落とすことだって悟っていたはずだ。

抵抗もせずに血を預けたのだとしたら、彼女は祈り続けていたのかも知れない。

ローガスが、一度だけ渡した血の味で、自分を思い出してくれることを。


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