ヴァンパイア夜曲
すると、ナディはロザリオをぎゅっ、と抱きしめ、ぽつり、と答える。
『私は、もう、ローガスさまに罪を重ねて欲しくないの。ローガスさまが旅人の血をむやみに奪わぬよう、私は樹海に霧で包み、彼と外界を隔てようとした。』
どうやら、濃霧の原因は目の前の彼女だったらしい。
ナディは私たちを見つめ、『ーーけど。』と言葉を続ける。
『…どこかで、ケジメをつけなければいけないと思っていたわ。私は、ずっと待っていたの。ローガスさまを止めてくれる人が来るのを。』
(…!)
シドを見上げたナディは、覚悟を決めたように声をあげた。
『そのコートの紋章。あなたはグリムリーパーなのでしょう?…お願い。ローガスさまを、お空の上でお姉さまに会わせてあげて。あの人は、自分の過去が分からなくなってもずっとお姉さまを探し続けているの。自分が殺したことにも気づかずに。』
「…!」
実体のない彼女は、私たちに触れることはできない。
しかし、必死にシドの腕に絡むナディは、まるで神にでもすがるような瞳をしていた。
シドの碧眼が、わずかに細まる。
「俺は同情なんかしない。…だが、スティグマを始末するのが俺の仕事だ。」