ヴァンパイア夜曲
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ーーホー…ホー…
城下町が寝静まる午後11時。
ベネヴォリの城に戻ってきた私たちはリスターノであった出来事を報告し、濃霧が晴れたこと、そして、ローガスの過去を王に告げた。
セオドルフ王の心を痛めたような表情が、ずきり、と胸を刺す。
「大儀であった。約束通り、関所の“通行許可状”を君たちに渡そう。…準備には時間がかかるのでな。今夜はここに泊まっていきなさい。」
王は、私たちに部屋を準備してくれていた。
城の豪華な食事をいただきシャワーを浴びた私は、一人部屋のバルコニーへ出て、ふぅ、と息を吐く。
ーーついに、東へと進む道がひらけた。
濃霧が晴れたことで、きっと、兄の率いるノスフェラトゥも動き出すだろう。
その時、ポケットに入れたロザリオが、小さく音を立てる。
脳裏に響くのは、ナディの言葉。
“私は、ずっと待っていたの。ローガスさまを止めてくれる人が来るのを。”
(…ティアナさんも、それを望んでいるのかしら…)
ーーコンコン。
「!」
その時、ふと、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。
こんな夜更けに、誰だろう。
(もしかして…、シド…?)
いつものように吸血のサイクルを見越して来てくれたのだろうか。
ふわり、と気持ちが高揚し、私はトトト…、と駆け寄り、ノブに手をかける。
しかし、ガチャ!と扉を開けた先にいたのは、予想していた黒コートの彼ではなかった。
「…やぁ、こんばんは。入ってもいいかな?」
「…た、タンリオット…?」