ヴァンパイア夜曲
すぱん!と窓へ飛んでいく枕。
突然の攻撃に「おわっ!ばか!危なっ!」と払ったランディは、カチャン!とティーカップを机に置いた。
「ちょっと、シド!こぼすでしょ…!言い当てられて恥ずかしいからって、八つ当たりしないでよね!」
「はぁ?!…ボケ。俺は別に、あいつが泣いてたからちょっと心配してただけだ。」
「“ちょっと”…?」
シドの反論に、ぱちり、と瞬きをするランディ。悶々としたオーラがダダ漏れの彼が、“ちょっと”どころではないのは一目瞭然。
しかし、ぷい、とこちらに背を向けてしまったシドへこれ以上言及する気はない。彼が、その性格上、わざと口にしない気持ちがひしひしと伝わってくるからだ。
ーーこういう時、シドはきっと、すぐに彼女の涙を拭いてあげられる場所に居たいのだろう。それが出来ない上に、さらに別棟にまで飛ばされたとなっては、不安で落ち着かないのも頷ける。
この二人の間には、旅仲間以上の絆がある。もはや恋愛感情も超えたような強さのものが。
お互いが気持ちを自覚していないうちから見守ってきたランディからすると、その関係は旅仲間として少し羨ましく思えるほどであった。