ヴァンパイア夜曲
(なぜ、シドがこの事件のことを?)
どくん、と体が震えた。
彼は、会話の中で任務と言っていた。まさか、国から派遣された調査員か何かなのだろうか。
しかし、薔薇の廃城の調査は、事件が起こってからすぐに済んでいるはず。今さら何を調べるというのだろう。
「あぁ、そうだ。もう一つ頼みが。“あれ”をここに転送してくれ。城に向かう前に必要なんだ。」
その時。シドが通信機の向こうに指示を出している声が聞こえた。
と、次の瞬間。
通信機から放たれた光が、雪の溶けた地面に魔法陣を描き出す。
漏れる光を隠すように、彼は黒いコートで魔法陣を覆った。そして、陣の中に現れた何かをそっと胸元にしまい込む。
今のは、何?
転送って?
私の知らない都市では、そんな魔法のようなシステムが発達しているのだろうか。
つい、見慣れない光景に興奮して、ぱっ、と胸を抱いた。高まる鼓動を押し込め、私は彼から背を向け柱の陰で小さく息を吐く。
(すごい…、私の常識を遥かに超えているわ)