ヴァンパイア夜曲
ーーこれは、脅されているのか?
そうとも思ったが、彼の言い分は正しい。正しいからこそ、何も言い返せない。
そもそも、純血のヴァンパイアは純血を繋ぐため、同じ種族で交わるのが常。一族が滅んだ私とは違い、タンリオットは結婚相手を選ばなければならない身分だ。
彼と結婚したら、きっと生活には困らない。
ーーそれに、もし、この旅が終わったら、私の居場所は無くなってしまう。
一度切れたはずの王族との縁が再び結ばれた。私は、ここに嫁ぐ“運命”なのだろうか。
(…だけど…)
脳裏をよぎるのは、“黒コートの彼”。
ずっと、側に居れるわけではない。旅が終われば、きっと、彼はグリムリーパーのホームに帰る。生まれ育った土地は、きっとここよりもさらに南で、距離で比べたらベンタウンより遠いだろう。
なんの繋がりも持たない私が、彼について行くわけにもいかない。
ーーすっ。
目の前に掲げられた通行許可状。タンリオットは、試すように私に告げた。
「レイシアが僕の妻になるというなら、これを渡そう。」
「!」
「…だが、もし断るようならこの話は無しだ。僕は、他人に恩を売るようなことはしないのでね。」