ヴァンパイア夜曲
ぱしっ…!
急に、手を掴まれた。
ぞくり、と震える背中。
彼の鈍い色の瞳が、わずかに熱を宿している。
「警戒もせずに男を部屋にあげるなんて、レイシアだって期待してたんだろう?」
「っ?!」
「拒む理由なんてないよね?…僕らは、“婚約者”なんだから。」
ーー油断した。
このヘタレ王子が手を出してくるなんて、全く予想していなかった。
振り切ろうにも、掴まれた腕が離れない。
シドとは違い、いつも戦場に身を置いているわけではないにしろ、相手は“男”。私の力が敵うはずがない。
「やっ、やだ!離して…!!」
「冷たいな、せっかく再会できたっていうのに。…どうせ僕たちは夫婦になるんだ。恥ずかしがらなくたって、怪しんで様子を見に来る城の奴らなんていないよ。」
「そういうことじゃなくて…っ!!」
強引な腕。
恐怖がこみ上げる。
シドは、こんな触り方しない。
シドは、今ここにいない。
仲間に助けを呼ぶ声も出ない。
(…っ!…助けて、シド………っ!)
…と、思わず涙がこぼれそうになった
その時だった。