ヴァンパイア夜曲
身を乗り出すランディ。必死になだめる彼をよそに、シドはぐいっ!とタンリオットの胸ぐらを掴む。
そしてそのまま無言で歩き出したシドは、乱暴に部屋の扉を開けると、タンリオットを廊下に投げ出した。
「さっさと帰れ…!」
シドのドスの効いた声が響き、すっかり覇気をなくして蒼白になったタンリオットの顔が扉の向こうに消えていく。
バタン!と扉を閉めたシドは、ばっ!とこちらを振り返った。
彼の瞳に私が映った瞬間、っ、と息が止まる。
ーーツカツカと歩み寄る彼。
それは、見たこともないほど怖い表情。
しかし、小刻みに震える私の指を見ると、シドの碧眼がわずかに揺れた。
ーーぎゅうっ…!
(…!!)
ふいに抱きしめられる体。
シドの黒コートが、ばさり、と私を覆う。温かい彼の体温がシャツ越しに伝わり、私を包んだ。
(…シドの、香り…)
こわばっていた体が、だんだんとほぐれていく。
力の抜けた私の体を支えるシドの腕はぴくり、とも動かない。しかし、感情が溢れたようなその強さは、さっきまでのタンリオットの強引なものとはまるで違った。
「……は…ぁっ……」
小さく聞こえるシドの声。
私の存在を確かめるようにぎゅう、と抱きしめた彼は、緊張が解けたように吐息をこぼした。