ヴァンパイア夜曲


ーーすっ。


ふいに、離れる体。

頭一つ分高い位置に、綺麗な彼の碧眼が見えた。


どきん…!


思わず胸が音を立てた、その瞬間。

シドが、ぐっ!と眉を寄せた。


「バカか!お前は!!」


「!」


「何、簡単に触らせてんだよ…!」


びくっ!


荒い口調に、さっきまでの淡い気持ちが吹っ飛んだ。彼の鋭い眼光は、明らかに怒っている。


「いくらなんでも、無防備すぎるだろ。お前、俺たちが来なかったらどうするつもりだったんだよ。」


「そ、それは…」


「ったく。俺には言いたい放題のくせに、あの王子の前では変に気ぃ使いやがって。他の男の前で隙見せてんじゃねえよ…!」


「…!」


かちん!ときた。

黙っていれば何なの。言いたい放題なのはそっちじゃない。

ムッ!とした私は、つい彼に言い返す。


「そんなこと、シドに言われる筋合いはないわ。確かに油断をした私も悪いけど、あんな強引に迫られたら抵抗できるわけないじゃない!それに、タンリオットは婚約者だし…」


「“婚約者”ぁ?それは昔の話だろ!」


「昔の話なんかじゃないわよ…!“通行許可状”と引き換えに、私はタンリオットの婚約者に戻ったの。」


「何だと…?!」

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