ヴァンパイア夜曲

この人は、どうやら普通の人より感覚が優れているらしい。敵の隠し持っている暗器にすぐ気付けるように訓練を受けているのだろうか。

あっさりと奪われて悔しくなった私は、むぅ、と頭一つ分高い彼を睨む。しかし、彼は子供騙しに付き合ってやった程度で、相変わらず本心の読めない飄々とした態度のままでいた。


するとその時。彼は何かに気づいたようにわずかに目を見開く。


私の頬を撫でる彼の長い指。

その仕草が思ったよりも優しくて落ち着かない。

思いもよらない行動に「っ?」と身構えると、シドは、はぁ、と小さく息を吐いてばさり、と自身のコートを脱いだ。


「…バカ。頬、冷えてんじゃねえか」


ふわり、と羽織らされた彼のコート。肩にかかった重みに胸が鳴る。

世話がやけると言わんばかりに目を細めた彼は、やがて私の髪をくしゃ、と軽く撫でて指を離した。


「じゃーな。子どもはさっさと寝ろ」


一歳しか違わないくせに。

ミックと同様に私を扱うシドにモヤモヤしながら、私は廊下の奥に消えていく彼の背を見つめたのだった。

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