ヴァンパイア夜曲

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「シドさん、もう行っちゃうんですか…?」


翌日。

少ない荷物を詰め込んだ鞄を肩にかけ、シドは修道院の前に立っていた。彼は昨夜私に宣言した通り、早朝にここを出ることにしたらしい。

悲しげな顔で見上げるミックを、彼は優しく撫でている。私が綺麗に畳んだコートを差し出すと、彼は、ばさり、とそれを羽織った。

コートの腕や肩口を見たシドは、無言で微かにまつ毛を伏せた。傷を受けて破れていた箇所を私が縫ったことに気づいたらしい。


結局、シドは最後まで謎の男だった。

別れの時になってまだ、名前と歳しか知らないなんて。まぁ、知ったところで二度と会うことはないだろうが。


「これからは無茶しないでね。今度は貴方を助けたりなんてしないから」


最後にそれだけ言い残し、私はミックと共に修道院へ戻ろうと彼へ背を向けた。


あぁ。

これでやっと、私の心をかき乱す存在が居なくなっていつも通りの日常が帰ってくる。

これまでの一週間は夢見たいなものだったんだ。きっと私の人生は、これからもここで平和に過ぎていくだけ。

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