ヴァンパイア夜曲
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賑わいを見せる商店街。
修道院から少し離れたこの町では、地方を流れる商人がそれぞれ店を出しているようで、道にはバザーのように様々なテントが並んでいた。
「生活用品は揃ったわね。あとは食料だけど、野菜や果物のテントはどこかしら?」
「あ!レイシアねえさま、お菓子屋さんがあります!みんなに買って行きましょうよ…!」
キラキラした瞳でキャンディーやクッキーを眺めるミックは、子どもの無邪気さに溢れている。
もちろん私も甘いものは大好きだが、そこは、ぐっ、と堪えてミックの手を引いた。
「ダメよ、無駄遣いしちゃ。それに、シドは甘いものが嫌いだから、私たちだけ食べていたら睨まれる……」
そこまで言って、はっ、とした。
なぜ彼の名前が出てきたんだろう。もう、あの男は修道院を去ったのに。恥ずかしいったらありゃしない。
困った。
出会った頃は想像すらしていなかったのに。彼が私の思っている以上に心の深いところに住み着いてしまうなんて。