ヴァンパイア夜曲


「聞かなかったことにしてね、ミック。はー、間違えた。男手が減って今日から食費が浮くわ。さ、行きましょう」


あぁ、早くシドが来る前の生活に戻りたい。彼の顔も思い出せなくなるくらい、一瞬で時が経てばいいのに。

やがて歩き出そうとした私だったが、ミックは一点を見つめたまま動こうとしなかった。


「どうしたの?ミック。…仕方ないわね。お菓子を買うなら二人だけの内緒に…」


こっそり耳打ちしようとした時、ミックが見つめているのはお菓子の看板ではないことに気がついた。

彼の視線の先にあったのは見慣れない鎧。

平和な農村地帯に似合わない武装した男たちがなにやら焦ったように集まっていた。


「ねえさま、あれ、何でしょう…?」


ミックの言葉に辺りを見回してみると、町の様子がいつもと違うことに気がついた。

人々はどこか不安げで、武装している男たちでさえ何かに怯えているような顔つきだ。

どうやら男たちは警察部隊などではないらしい。クワしか持ったことのない農民が、何かに競り立てられるかのように槍を持っているのだった。


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