ヴァンパイア夜曲
紙一重で彼らの腕をかわしていく。
しかし、それも時間稼ぎに過ぎない。彼らはざっと二十。少し人より動けるほどの私が一人で太刀打ちできる数ではない。
その時、首元のロザリオを乱暴に掴まれた。
体がぐらりと後へ引かれていく。
ヴァンパイアが十字架を嫌うなんて嘘だ。
自我を失ったスティグマの前では、素手で触って手が溶けようが聖なる力に浄化されようが、痛みなどないのだから。
「かはっ…!!」
ついに動けなくなる私。
抵抗しようとするが、スティグマはロザリオを離さない。
“このままでは殺される”
それは分かっていた。そのことだけがはっきりと。
しかし、逃げることはできない。
ブツン!という音とともに勢いよく弾け、パラパラとこぼれていく金の鎖。
首に下げられていたロザリオが床に落ちる。
その十字架が目に入ったとき、ドクンと体が脈打った。
急に歪む視界。高まる体温。熱を帯びた体に力が入らない。
頭が真っ白になって、そこに見えるのはバラバラになったロザリオのネックレスだけ。
『ガァァァアッ!!』
我を忘れたヴァンパイアが強く私の肩を掴んだ。
振り切る力も、もうない。
薄れていく意識の中で最後に浮かんだのは、あの夜、月夜の光に輝いて見えた
鋭く、儚く、美しい
死神の男の姿だった。