ヴァンパイア夜曲
「どうしてここにいる」
怒ったような口調。いつもの数倍冷たい声に、私は途切れ途切れに答える。
「ベンタウンに現れたスティグマが…廃城に向かったって…きいたから…」
「まさか、俺に知らせようと?」
こくりと頷くと彼は深いため息をついた。
そして、耐えかねたように強く怒鳴る。
「このバカ!お前が危険な目に遭ったら意味ねえだろ!……はぁ。スティグマに襲われるお前を見た瞬間、心臓止まるかと思っただろうが」
ひどく心配をしてくれたらしい。
見たこともないほど弱々しく揺れる碧眼が私を映した。
「シド、その拳銃は…?」
「これは昨日本部から転送してもらった“対スティグマ用”のショットガンだ。銃に仕込まれた魔法石が切れるまで、ヴァンパイアの心臓を撃ち抜く銀の弾丸が出続ける」
そういえば、昨夜シドは修道院の裏手で何やら魔法陣に現れた物体を胸元にしまっていた。
シドの話では、彼はこの地域に来る前にスティグマに襲われ、その時に魔法石が切れて瀕死の重傷を負ったらしい。
そして、最後の力を振り絞って町を目指して歩いていたところを力尽きて森で意識を失ったそうだ。
(だからあの時、雪の中で倒れていたのね…)