ヴァンパイア夜曲
城に飾ってあった王族の肖像画に描かれた王妃は、成長した私に瓜二つだった。きっと、シドもそれを見て確信を得たのだろう。
私は紛れもなく薔薇の廃城の生き残りであり、一夜にして絶滅した王家の姫なのだから。
「…っ…」
どくん!と体が脈打った。
息が乱れて苦しくなる。喉が渇いて仕方ない。
しかし、きっとこの渇きは水では満たされないのだ。
「血が欲しいのか」
シドの言葉に動揺した。
私は今まで吸血なんてしたことない。
兄に授けられたロザリオの力で、ずっとヴァンパイアの血は封じ込められてきたのだから。
しかし本能に抗うことはできない。
目の前に見えたのはシドの綺麗な首筋だった。
ごくりと喉が鳴る。
その時、シドがコートを脱ぎ捨てた。
しゅるりと解かれた胸元の青いクロスタイ。男らしいゴツゴツした手が、器用に黒シャツのボタンを外していく。
(え…?)
揺れる視界の中、彼は表情一つ変えずに襟元を緩めた。
「…何を、して……」
やっとの事でそう口にすると、迷いのない彼の声がはっきりと耳に届いた。
「俺の血を飲め。お前になら、好きにされても構わない」